デフレの心理 deflationary mentality 2003 5 25
デフレを引き起こしている原因は、いくつかあるでしょうが、
ここでは、2つに絞って検討してみましょう。
1 不安心理
いくら自信のある商品を作っても、売れ残って過剰在庫になるのではないかと不安になり、
控えめの生産量しか供給しない。しかし、本心は、自信のある商品だから、もっと生産したい。
さて、その結果、ある時は、商品が売れ残って、やはり売れ残ったかと、妙に安心する。
また、ある時は、すぐに商品が売切れてしまい、よかったと安心する。
いずれにせよ、市場は収縮したままに終わる。
しかし、これらの安心は、不安がその姿を変えた形で現れているに過ぎないので、
やがて、もとのとおり、安心は不安へと変わる。
この舞台のなかでは、消費者の影は薄い。脇役みたいなものである。
生産者が、どのくらい商品を市場に供給してよいか、不安のなかで意思決定する。
このように供給者が作ってきた市場は、疲労しつつある。
ある商品によっては、インターネットで消費者の需要量が把握できているので、
安心して、生産者は、商品を生産して供給できる。
しかし、このような商品は、市場の中では、少数派である。
一方、消費者は、リストラの不安、さらに教育費の不安、そして老後の不安で、
やはり、まるで、たくさん宿題を出された子供が気分よく遊べないと同じように、
消費者も気分よく、消費する気になれない。
さらに預金金利がゼロに近いので、デフレの進行とともに、財産が減るような気分になる。
しかし、これは勘違いで、デフレ下では、現金は目減りしない。逆に価値が増える。
しかし、消費者というものは、物事を感覚で判断し、消費を控える。
ここでは、消費者が市場を作るという発想はない。
さて、このように生産者も消費者も、不安に支配されている。
不安が、生産者と消費者を支配している。
不安に打ち勝つには、希望と夢である。
しかし、このような経済状況で、希望を持てといっても難しいかもしれない。
それならば、夢を持つべきである。
「21世紀の科学技術の夢」に投資をしようと考えてみることである。
しかし、消費者には、というか一般投資家には、
何が「21世紀の科学技術の夢」か、わからない。
この夢を描き、夢を提示する者、もう少し、アナリストが努力すべきである。
アナリストが、誰にでもわかる言葉で、客観的に語るべきである。
2 発展途上国または新興工業国が、世界経済市場に参入したこと。
今日の世界経済市場では、中国が新規に、その市場に参入したため、
先進工業国、特に日本では、デフレになっている。
もちろん、中国が農産物の分野だけの参入であれば、それほど、デフレにはならなかったが、
工業製品まで、市場に参入したとなると、先進国はデフレの危機にさらされる。
さらに中国に続いて、参入してくる発展途上国はあるか。
あるとすれば、この検討が複雑になるので、ここでは考えない。
おそらく、中国ほど、大きな人口を持つ国はないし、
また、あれほど安価で良質の労働力が供給できる国はないだろう。
そこで、世界の工場である中国が、インフレになった場合はどうなるか。
この場合、おそらく先進国も、インフレにならざるを得ないが、
「1」で見たように、先進国で、消費者マインドと生産者マインドが冷え切っている場合、
物価だけ上昇して、消費者や企業の所得は増えないという事態も考えられる。
ところで、一般的には、発展途上国は、工業国になる過程で、やがてインフレになるが、
もし、その途中で、「市場の失敗」が起きたら、デフレになる可能性がある。
中国の場合も、国民の所得が増えるに従って、
世界の工場から世界の消費地になる可能性があるが、
その過程で、「市場の失敗」が起きる可能性がある。
さて、このような状況は、以前になかったでしょうか。
確か昔、日本が、安価で良質の労働力で、
安価で良質の工業製品を先進国に供給したことが過去にありました。
その時は、どう対応したのでしょうか。
「市場の失敗」の構成要素に、不安の心理が含まれます。
以上の検討には、通貨の問題は考慮していないので、
通貨も考慮して検討する必要があります。